白い雲の上で、目を覚ましました……
恐れや苦しみの無い夢の中、僕は透明なせせらぎのカエルでした。
空は秋色に高く抜け、風もひんやりと爽やかです。
カエルは、アメンボの仔らに言いました。
『僕は、そろそろ土の中に潜って眠ることにするよ。』
『はい、新しい春が来たらまたここで逢いましょう。』
『うん、みんな元気でね。』
『カエルさんも、どうぞ穏やかな森の夢を。』
近くの葉の上にはクモがおりましたので、彼にも挨拶をしました。
『君はこれからどうするの?』
『僕は巣の上で過ごそうと想う。』
『そうか、冬は寒いから気をつけて。』
『ありがとう、君も静かな夢を。』
まるで神々のようにキラキラと光る水面に、メダカたちの姿も映りました。
水底には苔生した大小の石が並んで揺れ、みな美しくまるで冬眠するのが惜しい気持ちになります。
金色の夕焼け空にトンビが円舞し、風がそよいでガマの穂が白い綿毛をゆっくりと飛ばしました。
その時、カエルの時間は止まったのです……
この世界は永遠にも儚く、まるで泣けるような出来事に溢れていると想います。
今度は、どんな美しい夢を見られるのか、そんな穏やかな気持ちなのです。
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