三人はその日、街を離れ、灯台の見える公園をゆっくりと歩いておりました。
『しょうがないよ。』
『もう、遊べなくなるんだね。』
『また、来週遊びに来るよ。電車もあるし。』
『遠過ぎるよ……』
『そっか、そうだね。』
『うん、元気でね。』
『ありがとう、あんたもね。』
『みんな心配するから、もうそろそろ帰ろうか。』
『ちょっと待って、最後に一回だけボーレイジョーしようよ。』
少女たちはテーブルを探して座り、必要な小物を揃えて遊び始めました。
キャンディーと時計とペンを並べ、なるべく白いハンカチを被せます。
お互いの手を握って目を瞑ります。
(親愛なる亡霊の名と、彷徨える時の下に……)
心を込めて、約束の言葉を唱えます。
(ボーレイジョー、ボーレイジョー、どうか手紙を下さい……)
(ボーレイジョー、ボーレイジョー、どうか教えて下さい……)
これは、昔からノルトワースに伝わる子供たちの遊びでした。
そうして最後にハンカチに手を重ねてしばらく動かし、染みたインクの模様から絵や文字を見つけて読み解くのです。
『懐かしいね。』
『うん、よくやったね(笑)』
そう……そんな他愛もない魔法ごっこでしたが、時々、不思議なことが起こるのです。
壊れそうなほど柔らかい風にさざ波が立って、ハンカチがふわりとめくれると……
親が居ないことは、絶対に子供のせいじゃないんだ。
だから、自分を責めるな……胸を張れ。
手紙には、見慣れた筆跡でそう書いてありました。
少女たちの国は、ほんのりと青い春のベールを纏って、美しく揺れておりました。
旅は続きます……
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