僕は、亡霊です。
窓辺をぼんやりと歩きます。
小さな燭台を頼りに、真っ暗なお風呂の生温いお湯に顔半分まで浸かって、そっと目を閉じます。
耳を澄ませますと、海原の向こうを走る鉄道の音が聴こえます。
星々に照らされた草原を行きますと、そこには夢見る少女が落としたような、小さなハンカチが落ちております。
それに気を取られておりますとすっかり身体も軽く、少し走ってみたいほどの気持ちにもなって、まるで泳ぐように踊るように宙に浮かびます。
何処かに行きたいかと言えば、たいしたあてもなく、誰かと話したいかと想えば、そんな気もしますが、やはり少し面倒な気持ちにもなります。
僕は、亡霊です……
夢見る頃を過ぎても、花咲く頃を過ぎても……何処かで、もう一度君に逢える気がして……
結局、何かを探しているうちに、もう薄明るいドアの前に立っている訳です。
それは古い灯台で、中には螺旋階段が続いており、もちろん僕はそれを一段一段昇る訳ですが、頂上に着く頃にはもう朝が来るのです……
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