生きることが上手ではなかった君が姿を消して、もうだいぶ時間が経ちました。
けれど、やはり想い出すのです……そのはにかんだ笑顔や、他愛も無い出来事を。
何か見えますか。
足りないものはありませんか。
寒くはないですか。
誰かの声は聴こえますか。
僕は、今も君と同じ痛みを抱えていますが、それでも人生は美しいと、想います。
願わくは、あの日の君にそっと話しかけられたらと……想います。
画家なので美しいものを見つけるのは得意です……
もし話すことが出来たら、君の良い所をすぐに百個言うでしょう。
時が色々なものを連れ去って、このやるせない想いさえも、いつか誰も居ない荒野へと消え行くのでしょうが……
それまでは、遥か遠く、この小さな窓から君を想い、そっと話しかけようと想うのです。
今夜も、月が綺麗です……今夜も。
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