穴の中で、目を覚ましました。
昨日も、一昨日も、もうずっと前からのことです……
遠い昔は、鳥でした。
その時に大空を飛んで、ここに辿り着きました。
今はもう、飛ぶことは出来ません……羽が千切れてしまったのです。
なので、この穴の中に居ます。
不自由は感じません……空には、季節の風が見えます。
夜は真っ暗ですが、そのお陰で星が綺麗に見えます。
望みは無いので、何かを祈ったことはありません。
この前、白い花が咲きました。
甘酸っぱい赤い実が生りました。
昨日、とても美しい夕焼けを見ました。
今日も、世界を眺めています。
日が暮れる頃には、セミが羽化しそうな気配です……。
朗読はこちら