ロッカは、小さな船室に横たわり、暗い海に浮かんだ満月を眺めておりました。
それから、オレンジ色に揺れる灯りの下で月ノ子の森の物語を読みながら、ウトウトしました。
……バードマンは困っておりました……
本来、始まりや終わりを告げるのは鳥の役目なのですが、そのカナシミがあまりにも透き通っておりましたので見ることが出来なかったのです。
困り果てたバードマンは、二人の物語を覗くために、風を起こしてほんの少しだけ時間を戻しました……。
『助けられなくて、ごめん。』
(大丈夫さ、仕方ないよ。)
『私が見つけてしまったから……』
(そんな風に想ってないよ、僕が君を選んだのさ。)
(またいつか、何処かの森で逢おう……)
(……うん。)
静かに風が止んで、森と空を繋ぐ月虹が架かりました。
ぼんやりと目を覚ますと、舷窓(げんそう)と呼ばれるその双眼鏡にも似た丸い窓が、不思議な顔に見えました。
あなたは今日、どんな物語を見ましたか……
おやすみなさい、どうぞ花のような夢を……
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