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良く晴れた秋の日のことです。

黄色や赤茶色に焼けた葉の混じる森を抜けたクァンタフラは、心地良い風渡る草原を飛んでおりました。

透き通った風に乗ってゆらゆらと巡っていると、金色に枯れた蔓の絡まった茂みの葉の上で、お腹の大きなメスのカマキリが、相手のオスを抱えてムシャムシャと食べている所を見つけました。

もちろんそれは、森に生きるための知恵であり、お互いに望んだ営みであることは知っておりましたが、草原の虫たちにとって物凄く恐ろしい存在である彼らが、苦痛のためか、あるいは念願を果たした喜びのためか……涙さえ浮かべ、そうしている姿はやはり強烈に目を奪う光景でした。

次の瞬間、悉く耳を澄ませたクァンタフラは、彼らの声を聴きました。

……嗚呼、だけどやっぱり心残りさ……

君はこれから、たった一人で木の枝を廻り歩き、清潔に乾いた場所を探して卵を産んで守らなければならない。

恐らくその時には……誰も居ない枝の上でじっと過ごす君を、カラスの真っ黒く尖ったくちばしが突然襲うこともあるだろう。

あるいは、スズメバチの鋭い毒針に刺されたり……もしかしたら、大ネズミに捕まってあの茶色い牙に噛まれてしまうかもしれない。

……もしも容赦のない寒さが訪れたら、どうしようもなく身体が動かなくなって、ポトリと落ちた冷たい土の上で凍えてしまうだろう。

……その瞬間の、一人ぼっちの君の心細い気持ちを想うと……

……そこに居られない僕は、どうにも心配になるんだ……

……嗚呼、もう痛みが消えてきた……

……命を上手に使えて僕は満足さ、君の温かい腕の中で眠れて幸せだ……

静かに雲が流れました。

草原には、乾いた風が美しいラブソングのように吹いておりました。

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